映画『アイ・アム・レジェンド』は、2007年公開。監督はフランシス・ローレンス。主演はウィル・スミス。
映画上映版とは別バージョンのエンディングが後に公開されたことでも話題になった。
映画『アイ・アム・レジェンド』あらすじ
夢の治療薬となるはずだった。
アリス・クリピン博士がはしかウイルスを元に作り出した治療薬で、世界中のがん患者が救われるはずだった。
だが、その治療薬を投与された患者たちは、やがて狂犬病のような症状に見舞われる。治療薬が変異して、致死率90%のウイルス(K.V.と呼ばれる)となってしまったのだ。
それから3年後。米国陸軍中佐であり科学者でもあるロバート・ネビルは、ニューヨークに一人で残り、K.V.の感染者を元に戻す血清を開発しようとしていた。
K.V.に感染した人間は、ほとんどが死亡したが、一部は他の人間を襲って食料とするダーク・シーカーとなっていた。
ネビルは動物実験で成功した血清を、ダーク・シーカーにも試した。だが、まだ人間では成功していなかった。
ネビルは新しい血清を試すため、罠を使ってダーク・シーカーを捕まえに行く。
その時、明らかに他とは違う行動をするダーク・シーカーと遭遇するのだった。
映画『アイ・アム・レジェンド』感想
映画『アイ・アム・レジェンド』のネタバレを含みます。
なぜ?
映画『アイ・アム・レジェンド』を観ていて、最も疑問に思ったシーンは、ダーク・シーカーの群れがネビルの家を襲撃したシーン。
なぜ襲撃する必要があったのだろうか?
そもそも、ダーク・シーカーには理性など無いのでは?
ネビルたちを捕食するため? 腹が減っていたから群れで襲いかかった?
この疑問については、公開されなかった別バージョンのラストシーンがヒントになるようだ。
別バージョンのエンディング
映画『アイ・アム・レジェンド』には、公開されなかった別バージョンのエンディングが存在する。
ネビルの家を襲撃したダーク・シーカーたち。
地下室までネビルたちを追い詰め、そこで、以前にネビルによって捕らえられた女性ダーク・シーカーを見つける。
ネビルはその時、気がついた。ダーク・シーカーには知性があることに。そして、彼らは、ネビルによって捕らえられた女性ダーク・シーカーを助けに来たのだということに。
ネビルは女性ダーク・シーカーを元のダーク・シーカーに戻し、助けに来たダーク・シーカーたちに返した。
そして、ネビルたちはニューヨークを去り、生存者たちの街へ向かった。
レジェンド
別バージョンのエンディングについて知ると、ダーク・シーカーがネビルの家を襲撃した理由もわかる。
そして、『アイ・アム・レジェンド』というタイトルも、公開版エンディングと別エンディングとでは全く異なる意味を持つことにも気付く。
公開版エンディングの場合、ネビルは命がけで血清を開発した男としてレジェンドとなった。
一方、別エンディングの場合は?
今や人間よりダーク・シーカーの方が圧倒的に多い世界。
ダーク・シーカーにしてみれば、ネビルは、(ダーク・シーカーなりに)平和に暮らしていたのに銃を持って襲撃してきて、仲間を連れ去っていく無法者。
平和なダーク・シーカー社会において、何人もの仲間を殺し、連れ去っていく殺人者。それがネビル。
別エンディングの場合、「レジェンド」という意味は、「伝説的な殺人鬼」というような意味になるのだろう。
ネビルは、「ダーク・シーカーにとっては自分こそが異常な殺人鬼である」ことを悟り、『アイ・アム・レジェンド』、つまり、「私は(ダーク・シーカーにとって)伝説的な殺人鬼なんだ」と思い知る。
立場が変われば見方も変わる。
「人類のために、ダーク・シーカーと化した人々を救うために」一人で苦悩し戦っていたネビルだったが、ダーク・シーカー側からしてみれば、「余計なお世話だ、この殺人鬼め!」くらいに思われていたのだろう。
自分の「正義」は相手にとって「悪」なのかもしれない。
相手を理解せず、自分の正義を押し付ける行為は、正義の押し売りでしかなく、相手にしてみたら迷惑なだけということもあるのだろう。
【本作】
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