映画『モールス』は、2010年公開。監督はウィリアム・フリードキン。
R15+指定の映画。
名作映画『ぼくのエリ』のリメイク版です。
映画『モールス』あらすじ
アメリカの、とある田舎町。雪の降る夜、少年オーウェンは不思議な少女に出会う。
彼女の名はアビー。オーウェンの家の隣に越してきた少女だ。
オーウェンは身体が小さく、いじめられっ子。友だちもいない。
アビーもいつも一人でいる。それも、いつも夜中に、裸足で。
オーウェンとアビーは次第に心を通わせていく。
同じ頃、オーウェンとアビーの住む町で、凄惨な殺人事件が発生する。
犯人と思われる男は自ら酸を顔面に浴び、その後、病院の窓から飛び降りて死亡。
事件を捜査する刑事は、オーウェンとアビーの住む団地に辿り着くのだが……。
映画『モールス』感想
映画『モールス』のネタバレを含みます。
Let Me In
映画『モールス』の原題は”Let Me In”。「入ってもいい?」というような意味。
アビーの正体は吸血鬼。吸血鬼は「入ったことのない建物には許可をもらわないと入れない」という弱点がある。
アビーがオーウェンの部屋に入ろうとしたとき、わざわざオーウェンから許可をもらおうとしたのはそのためだ。
許可をもらわなければどこにも入れないなんて、なんだか可哀想な気がする。と言っても、招き入れたら血を吸われてしまうかもしれないのだが。
拒んだ理由
アビーはオーウェンから友達になって欲しいと言われたとき、最初は断った。
断った理由は、アビーが吸血鬼だから。
人間よりも遥かに長い時を生きる吸血鬼と人間とでは、友だちになることも難しいことなのだろう。オーウェンは歳をとってゆくが、アビーはずっと12歳の見た目のまま。
アビーと一緒にいた男性、自ら酸を浴びて病院の窓から飛び降りた男性も、最初はオーウェンと同じだったのかもしれない。
アビーの家には、1枚の写真が飾られていた。写真の中で、男性は今よりずっと若く、一方でアビーは今と変わらない姿。
アビーは人間と一緒に過ごすことがどういう意味を持つのかを知っている。自分は変わらないまま。でも、一緒にいる人間は歳を取り、変わってゆき、そしていずれ死んで自分の前からいなくなってしまう。
アビーは常に『残される側』。
アビーは『残される淋しさ』を何度も経験してきたのかもしれない。
二人の未来
映画『モールス』のラストシーンでは、オーウェンとアビーが電車に乗ってどこかに向かう姿が描かれていた。
はたして、二人はどこに向かうのか?
血を吸わなければ生きていけないアビーは、同じところに長く留まることがでできない。怪しいと疑われる前に逃げなければいけないから。
生きるために他人を殺さなければならないアビー。そんなアビーと共に生きるオーウェン。
アビーは、その驚異的な身体能力を使って、危機を乗り越えることもできるだろう。では、普通の人間であるオーウェンは?
アビーと生活を共にしていた男性のように、オーウェンもまた、いつの日かアビーのために死ぬ日が来るのかもしれない。または、警察に捕まって刑務所で生活することになるかもしれない。
そして、オーウェンが仮に寿命を全うしたとしても、二人にとって幸せであるかは疑問が残る。
先に去るオーウェン。残されるアビー。
全く違う時間を生きる二人が、本当に幸せになる方法はあるのだろうか?
オーウェンもいずれ、あの病院から飛び降りた男のように、アビーとの生活で悩み苦しみ死んでいくのかもしれない。
それでも、互いに心を通わせ、共に生きた日々は、二人にとって幸せなのかもしれない。
【原作小説】
【本作のリメイク前オリジナル版】
【本作】
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