映画『ハイテンション』は2003年公開。監督はアレクサンドル・アジャ。
R15+指定のスプラッタ系ホラー映画です。
映画『ハイテンション』あらすじ
大学生のマリーは、集中して勉強するために、友人のアレックス(女性)の家に泊まりに来た。
アレックスの家は、古い農家を改築した家。トウモロコシ畑の中にぽつんと建つ一軒家。
マリーがアレックスの家に到着した日の夜、一台のトラックがアレックスの家の前に止まる。
すでに寝静まった家の中、ドアベルが鳴り響く。
アレックスの父が玄関ドアを開けると、そこには一人の男が。
男は有無を言わさずアレックスの父に襲いかかる。
男はアレックスの家族を次々と惨殺し、アレックスをトラックに乗せ、その場を去ろうとする。
マリーはアレックスを救うため、包丁一本を持ってトラックの荷台に侵入するのだが。
映画『ハイテンション』ネタバレ感想
映画『ハイテンション』のネタバレを含みます。
結局、何だったのか?
殺人鬼に襲われた家族。
誘拐された女性。
女性を助けるために戦った友人(主人公)。
でもどこかおかしなところがあり、最後まで観ると、何やら主人公が個室に監禁されているようで……。
結局、この『ハイテンション』では何が描かれていたのだろう?
答えは簡単で、「主人公であり、精神に異常をきたしているマリーが語った殺人事件」を描いていたのだ。
殺人鬼はマリー。精神異常者であるマリーは、アレックスの家族を殺し、アレックスを誘拐した。そして、警察に捕まったマリーは、精神病院で隔離され、「自分は殺人鬼からアレックスを救おうとした」という妄想をしていた。
その『妄想』は、マリーの中では『真実』。現実ではマリーが全ての殺人・誘拐を行ったのだが、マリーの記憶の中では、マリーがアレックスを殺人鬼から救おうとしたのだ。
そして、この映画『ハイテンション』は、そんなマリーの妄想を描いた物語だった、というわけだ。
では、あの男は誰?
映画『ハイテンション』に登場した殺人鬼の男は誰だったのだろう?
登場してすぐのシーンで女性の頭を投げ捨てたり、アレックスの家族を惨殺したり。
あの男は、マリーが創り出した妄想の産物。現実には存在しない人物。
「マリーがアレックスを救おうとした」という妄想を創り出すために生み出された『マリーの記憶の中だけに存在する殺人鬼』。
殺人鬼が登場したシーンで、女性の頭を投げ捨てたのも、マリーの妄想。マリーの中で、あの殺人鬼は、『若い女性を襲う、ねじ曲がった性癖を持つ殺人鬼』だったのだろう。
あの男が存在しない、と仮定すると、いろいろと辻褄が合う。
なぜマリーだけが殺人鬼に見つからなかったのか?
なぜマリーが手に入れた銃の弾を、殺人鬼は予め抜いておくことができたのか?
あの殺人鬼はマリーが妄想の中で作り上げたのだから、マリーにとって都合よく動くのは当たり前。
『凶悪な殺人鬼からアレックスを救ったマリーの物語』を演出するために創られた、強敵だけど、最後はマリーに倒される殺人鬼。それがあの殺人鬼の正体だったのだから。
「録音、始めて」
映画『ハイテンション』の冒頭で、マリーは「録音、始めて」と言う。
その直後に流れる『傷ついたマリーが森の中を逃げて、助けを求めるシーン』は、現実ではアレックスが経験したこと。
この『ハイテンション』という映画は、あの「録音、始めて」というセリフの直後から、再び精神病院のシーンに戻るところまでのほぼ全てがマリーの妄想だったということになる。
ただ、一部で現実が混ざっていた。
警察が見た監視カメラの映像に、マリーが殺人を行う様子が映っていたシーン。
マリーに助けられたアレックスが包丁を握りしめながら「触らないで!」と叫ぶシーンと、その後のアレックスが逃げるシーン。
これらのシーンは、現実とマリーの妄想とが混ざったシーンになっていた。
「誰にも邪魔させない」
マリーが精神病院で何度も口にしていた言葉「誰にも邪魔させない」。
これは、「アレックスは誰にも渡さない。私とアレックスの関係を誰にも邪魔させない」という意味だろう。
マリーにとって、アレックスは特別な人。
その特別な人と一緒にいる時間は誰にも邪魔されたくない。
たとえ、相手がアレックスの家族でも。
アレックスを独り占めするために、アレックスの家族を殺した。そして、もしかしたら、アレックスの恋人も殺すつもりだったのかもしれない。
全てはアレックスを独占するため。
はたして、マリーはアレックスを愛したから狂ってしまったのか、それともアレックスと出会ったときにはもう狂っていたのか。
マリーがどの時点で狂ってしまったのかは定かではないが、この映画『ハイテンション』に描かれていた殺戮劇は、『愛ゆえの凶行』だったのだろう。
【本作】
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