【映画】オーディション~あらすじと感想~キリキリキリキリキリィ……痛い?

映画『オーディション』あらすじと感想

映画『オーディション』は2000年公開。原作は村上龍。監督は三池崇史。出演は石橋凌、椎名英姫、沢木哲、國村隼、石橋蓮司、松田美由紀。

R15+指定のホラー(スリラー)映画で、海外の映画祭で観客が入院したことでも有名な作品です。感受性が強い人は、特に終盤のクライマックスシーンの視聴はご注意を。

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映画『オーディション』あらすじ

青山重治は、7年前に妻を亡くしていた。それ以来、青山は息子と二人で暮らしてきた。

青山は、高校生になった息子に言われ、再婚しようかと考え始める。

だが、40歳を超えている青山は、この歳で失敗したくないと悩み、友人の吉川に相談する。

すると、吉川から「でっち上げの映画オーディションを開催して、応募してきた女性の中から選んだらどうだ」と提案される。

吉川の提案に興味を持った青山は、吉川に頼み、早速オーディションを開催した。

そのオーディションを通じて、青山は山崎麻美と知り合う。

美しく真面目そうな麻美に、青山は惹かれていく。

一方、吉川は独自に麻美について調べるが、何も分からない。『今の山崎麻美』と繋がっている人物が一人もいないのだ。

吉川は青山に「山崎麻美はやめておけ」と忠告するが、青山はもう麻美のことが頭から離れない。

結局、麻美のことをよく知らないまま、青山は麻美と逢い続けるのだった。

映画『オーディション』感想

映画『オーディション』のネタバレを含みます。

『山崎麻美』を作り上げたもの

山崎麻美がおかしくなってしまったのは、幼少時代から受け続けた虐待によるもの。

虐待により心が歪んでしまった麻美は、残念ながらそのまま成長してしまった。

虐待された人が全て麻美のように歪んだ人間になるとは限らない。成長途中で何らかの救いがあれば、助かることもあるだろう。

麻美の場合、救いはなかったようだ。

「自分がどんな人間かが分かるのは、痛いこと、苦しいこと、辛いことを経験しているときだけ。うんと辛い目に遭っているときだけ、自分の心の形が分かる」

これが、虐待を受け続けた麻美が辿り着いた真実。愛されず、痛めつけられて育った麻美が見つけた真実。痛みや苦しみに満ちた人生の果てに手に入れた真実。

欲しかったもの

麻美が本当に欲しかったもの。それは、愛。

「自分だけを愛してほしい」という麻美は、文字通り、「自分だけ」を愛してくれる人を求めた。

麻美は、青山にも「自分だけを愛してほしい」と求めた。青山もその求めに応じたが、青山が考える「自分だけ」と麻美の考える「自分だけ」とは大きく異なっていた。

青山が、息子や愛犬などを愛していることが許せなかった麻美。自分以外の何かを愛していることを許せなかった麻美。

麻美が青山に対して行った仕打ちは、青山への怒りであり、青山に青山自身がどんな人間であるかを思い知らせるものだったのかもしれない。

「辛い目に遭っているときだけ、自分の心の形が分かる」

非道い人間である青山に、青山自身がどれだけ非道い人間なのかを知らしめるための行為。

それがあの「キリキリキリキリキリ……」だったのだろう。

生きてて良かったっていう時が必ず来る

青山の最後のセリフ「生きてて良かったっていう時が必ず来る」も、麻美の前ではどこか虚しい。

麻美は、24歳になり青山と出会うまで、相談できる相手もいなかった。ずっと一人で頑張ってきた。

麻美にとって青山との出会いは、人生を良い方向に変えてくれるほどの出会いだったのかもしれない。

だが、もう遅すぎた。

麻美はもう、完全に歪みきっていた。

優しい人に出会って相談に乗ってもらって、人並みに愛してもらえるくらいじゃ立ち直れないくらいに歪みきっていた。

「生きてて良かったっていう時が必ず来る」というのは確かにそうなのだろう。だがおそらく、受けた心の傷によってはタイムリミットというものがあって、もう手の施しようが無くなってしまうこともあるのだろう。

麻美のタイムリミットはとっくに切れていて、きっともう、歪んで壊れたままで生きていくしかない。

麻美が犯した犯罪は重いものだけど、果たして、麻美をあんな人間にしてしまった人々の罪はどうやって問えばよいのだろうか?

 

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