映画『ターミナル』は、2004年公開、 スティーヴン・スピルバーグ監督、 トム・ハンクス、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、スタンリー・トゥッチ出演によるハートウォーミング・コメディ作品。
映画『ターミナル』あらすじ
アメリカ、ジョン・F・ケネディ空港。
ビクター・ナボルスキーはアメリカへの入国を拒否されてしまう。ビクターが飛行機に乗っている間に、ビクターの祖国でクーデターが起こり、パスポートが無効となってしまったのだ。
空港から入国も出国もできなくなってしまったビクター。
それでもビクターは、空港の中で生活を始め、やがて多くの仲間を得ていく。
空港から逃げ出す機会は何度もあった。なのに何ヶ月も不自由な生活を送るビクター。
彼はなぜ、アメリカに来たのか?
彼の想いを知ったとき、仲間たちが取った行動とは?
映画『ターミナル』ネタバレ感想
映画『ターミナル』のネタバレを含みます。
規則と秩序
映画『ターミナル』では、主人公のビクターは空港に閉じ込められてしまう。原因は、母国で紛争が起こり、パスポートが無効になってしまったため。
映画を観ている私からすれば、事情が事情なのだからもっと柔軟に対応してもいいじゃないかと思うのだが、その『柔軟』をどこまで『柔軟』にするかが問題だ。
あまりに柔軟にしすぎてしまうと、無法地帯になってしまう。例えば空港で規則を蔑ろにしていたら、テロリストや密売人など、国にとってあまりにも好ましくない人物を入国させてしまうことになりかねない。
ビクターに対する処置も、仕方のないものだった。どんな事情があろうと、規則が厳密に守られるべき場所で簡単に例外を認めるわけにはいかなかった。
本当に人を動かすもの
歴史を紐解いてみれば権力者は力と恐怖とで民衆を従わせてきた。そして耐えきれなくなった民衆によって権力者は倒されてきた。
映画『ターミナル』でも、国境警備局主任のディクソンが力と恐怖とで部下やビクターを従わせようとする場面がある。
最もわかりやすいシーンは、紛争が終わったあと、ビクターを強制的に国に返そうとした場面だろう。
ビクターを従わせるために、ビクターの友人を人質に取った。帰らなければ友人たちが苦しむことになる。ビクターは仕方なく帰国を決意した。
だが、真実を知った清掃員のグプタは、自らの身を危険にさらしてビクターに帰国を思い止まらせた。警備員のレイは、命令に背き、ビクターにコートを掛け、ビクターの入国を見逃した。
人々がビクターに味方したのは、皆がビクターを愛したから。大切な仲間であるビクターの願いを叶えるために、たとえ自らの身が、未来が苦しいものになろうとも、力と恐怖に反旗を翻した。
ディクソンのように、そして歴史上の多くの権力者たちのように、力と恐怖で人々を従わせるのは効果的で簡単かもしれない。だがその方法では、人々の心までは掴めない。
人々を本当に動かすのは、信頼や愛などといった想いなのだろう。
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