PR

【映画】すずめの戸締まり~あらすじと感想~人との縁を繋ぎながら災いを鎮める旅の物語

映画『すずめの戸締まり』あらすじと感想

映画『すずめの戸締まり』は、2022年公開、新海誠監督、 原菜乃華、松村北斗、深津絵里、神木隆之介出演によるロードムービー系ファンタジーアニメーション作品。

映画『すずめの戸締まり』あらすじ

岩戸鈴芽(いわとすずめ)は通学途中、廃墟を探しているという一人の男性と出会う。

その男性のことが気になっていた鈴芽は、一人で廃墟に向かい、扉を見つけた。その扉から中に入り、そこにあった石の像を持ち上げると、像は猫となって逃げてしまう。

その日の昼休み、鈴芽は学校の窓から巨大な煙を見る。煙の根元はあの扉があった場所。鈴芽は慌てて扉のある場所へ駆け出す。

開きかけた扉。その扉を閉めようとする、あの男性。結局、扉を閉められず、扉の中から噴き出してきた煙が倒れ、町は地震に見舞われた。

けがをした男性を介抱する鈴芽。そこに、人間の言葉を話す白い猫が現れ、男性をイスと同化させてしまう。

猫を追う、椅子に変えられた男性。鈴芽はさらにその後を追っていく。こうして、鈴芽の旅が始まった。

映画『すずめの戸締まり』ネタバレ感想

映画『すずめの戸締まり』のネタバレを含みます。

災いを鎮める旅

巻き込まれる形で始まった鈴芽の旅。

その旅の目的は、災いをもたらすミミズが地上に現れ、災害が起こることを防ぐこと。

ミミズがもたらす災害が大震災であることを知った鈴芽は、もはや他人事として見て見ぬふりはできなかったのだろう。

鈴芽は東日本大震災の被災者だったのだから。

震災で母を亡くし、故郷の福島から宮崎へ移住。震災の恐ろしさや辛さを知っているから、震災を防ぐために命懸けで行動する。

旅先で出会った人々との交流も、鈴芽の気持ちを強くする要因だったのかもしれない。「この人たちの命を、幸せを守りたい」そんな気持ちもあったのかもしれない。

縁を繋ぐ旅

災いを防ぐために後ろ戸を閉める旅。その旅の途中で鈴芽は出会いを繰り返す。

鈴芽が出会う人々は誰も優しい。初対面で、冷静に考えれば家出少女にしか見えない鈴芽を警察に連れていくこともなく受け入れてくれる。

鈴芽は行く先々で縁を繋ぎ、出会いと別れを繰り返し、映画のエンドロールでは再会を果たしている。

現実では、人と人との関係は希薄になり、『仲間』と『それ以外』との線引きが明確で強くなっているように思う。お隣さんの顔も知らない、なんてことも珍しくないようだ。

『それ以外』の人々を最初から拒絶するのではなく、とりあえず受け入れてみると、世の中はそんなに悪い人ばかりじゃないと気付くかもしれない。

鈴芽のように縁を繋いでゆくことで、世界はもっと優しく温かい場所になるかもしれない。

ダイジンの真意

白猫の姿をしたダイジンの正体は、鈴芽が抜いてしまった要石。

行く先々で扉を開いていた、と思われたが、実際には鈴芽を後ろ戸の場所まで案内していたのだった。

ふさふさで意気揚々としていたダイジンが、鈴芽から拒絶されたとたんにしぼんでしまったところを見ると、本気で鈴芽の役に立ちたい、役に立っていると思っていたようだ。

ダイジン、最初に「後ろ戸のところに案内する」と言っていれば、こんなにややこしいことにならなかったかもしれないのに。

「自分は役に立っている。相手に親切にしている」と思っていても、肝心の相手に真意が伝わっておらず、誤解されて嫌われてしまうことはあり得ること。

相手を助けたいのなら「助けたい」と伝えることは、重要だが、忘れがちなので意識することが大切だ。そうしなければ、ダイジンのように好きな相手に誤解されて嫌われてしまうかもしれない。

環が心の奥で思っていたこと

旅の途中、鈴芽と環がケンカをする。その時、環が鈴芽に対して「こんな人生、割に合わん」と言い放ってしまう。

自分の人生を犠牲にして姉の子を育ててきたのだから、「もう嫌だ。もうやめたい」と思ったとしても不思議はない。

誰だって、人と関わる以上、相手に少なからず我慢を強いている。自分が自由に好きなように振舞えるのは、周りの人たちが我慢してくれているからだ。

周りの人たちの我慢に気づかず、我がままを通していれば、いつか周りの人たちから非難される。もしかしたら、周りの人たちが去ってしまうかもしれない。いつの間にか、周囲に味方が一人もいないという状況になってしまうかもしれない。

成長の物語

旅が終わり、鈴芽は過去の辛い記憶に一区切りをつけられたのだと思う。

震災と母の死という辛い過去。

そして、旅を通じて鈴芽は、自分が多くの人に支えられていることを知ったと思う。

自分の人生を犠牲にして育ててくれた環。旅の先々で出会い助けてくれた人たち。そして、自分の人生をかけて扉を閉めて陰ながら人々を救っている草太。

十代という年代は子供から大人へ成長する大切な時期だ。『すずめの戸締まり』は鈴芽が大人へと成長する様子を描いた物語ともいえるだろう。

自分が多くの人に支えられ、また同時に、多くの人を支える。

旅での経験を通じて、鈴芽は大人に向けて、未来に向けて、大きな一歩を踏み出したのではないだろうか。

【本作のDVD・Blu-ray】

【『すずめの戸締まり』小説版】

【『すずめの戸締まり』コミカライズ版】

映画『すずめの戸締まり』関連記事

真逆の世界で育った少年と少女の出会いが世界を変える

【映画】サカサマのパテマ~あらすじと感想~常識は本当に正しいのか?
映画『サカサマのパテマ』は、2013年公開、吉浦康裕監督、 藤井ゆきよ、岡本信彦出演によるボーイ・ミーツ・ガール系SFアニメーション。 映画『サカサマのパテマ』あらすじ 地下世界に住む少女『パテマ』。 パテマは行方不明になった『ラゴス』を探...

人語を話すアオサギとともに、少年は不思議な世界に送られる

【映画】君たちはどう生きるか~あらすじと感想~ジブリ宮崎駿監督から若い人たちへのメッセージ
映画『君たちはどう生きるか』は、2023年公開、宮崎駿監督、山時聡真主演による作品。製作はスタジオジブリ。 第96回米国アカデミー賞でアカデミー長編アニメ賞を受賞。 映画『君たちはどう生きるか』あらすじ 眞人は母親を空襲で失い、父の再婚によ...

荒廃した世界で青年は少女型ロボットと出会った

【アニメ】Planetarian~ちいさなほしのゆめ~あらすじと感想~荒廃した世界で男の人生を変えた奇跡
アニメ『Planetarian~ちいさなほしのゆめ~』は、2016年公開、Key原作、津田尚克監督、すずきけいこ、小野大輔出演によるSFファンタジーアニメーション作品。 『Planetarian~星の人~』は『Planetarian』アニメ...
error: Content is protected !!
?