映画『籠の中の乙女』は、2009年公開、ヨルゴス・ランティモス監督、クリストス・ステルギオグル、ミシェル・ヴァレイ、アンゲリキ・パプーリァ、マリー・ツォニ、クリストス・パサリス、アナ・カレジドゥ出演によるヒューマンドラマ。
映画『籠の中の乙女』あらすじ
とある裕福な家庭には、3人のきょうだいがいた。
何不自由なく育てられているように見える。だが、両親の教育方針は異常だ。
3人を決して家の敷地から外に出さない。外の世界に関する言葉は、本来とは異なる意味で教える。
3人は両親によって完全に、外界から隔離されていた。
だが、3人は成長するにつれ、外の世界に興味を持つようになってゆく。
映画『籠の中の乙女』ネタバレ感想
映画『籠の中の乙女』のネタバレを含みます。
三大欲求
人間の三大欲求。食欲、睡眠欲、性欲。
本作のきょうだいたちは、閉ざされた空間で限定された知識のみを与えられてきた。
そんな環境でも、三大欲求を満たす必要があった。
食欲と睡眠欲は、誰しもが持ち、どちらも満たされなければ死んでしまう。
では、性欲は?
きょうだいたちの年齢は明らかにされていないが、見た目からももうある程度の年齢には達していると考えられる。
そして、性欲を満たすために、女性が雇われていた。
性欲を満たすために何をすればよいのかは、おそらく教えられなくとも自然と行ってしまうのだろう。
本作のきょうだいたちが行ったように、無邪気に遊ぶように、自然と学び、覚えてゆくものなのだろう。
好奇心
きょうだいたちは家の敷地から外に出ることを禁じられていた。外は恐ろしい場所だと教えられ、たとえ外へ繋がる扉が開いていたとしても、そこから出ることはしなかった。
だが、きょうだいたちは外に興味がなかったわけではない。飛行機などの、外からくるものに少なからず興味を持っていたようだ。
その興味をさらに掻き立てたのが、クリスティナが持ち込んだビデオ。それを観た長女は、いよいよ外への好奇心を膨らませてゆく。
どれだけ「外は恐ろしい場所」と教えようと、好奇心を抑え込むことはできない。ましてや、年齢を重ねれば、いつまでも親の言いなりになり続ける訳がない。
長女は、好奇心を抑えきれず、外に出ることを決意する。
行動する者
きょうだいたちは、犬歯が生え変われば外に出られると教えられ、信じていた。
そこで長女は自ら犬歯を折った。
これで自分は外に出られる、長女はそう思ったに違いない。
好奇心から行動を起こし、そして行動したからこそ変化が生まれた。
車のトランクに隠れた長女は、まんまと外へと脱出した。
もしも、あの家の中で親に言われるがままに従っていたら、一生をあの家の中で過ごすことになったかもしれない。少なくとも、親が存命の間は。
脱出後の長女がどうなったのかは描かれていない。
自由になったのか?
家に帰ったのか?
それとも、誰かが無知な長女を騙し、利用したのか?
長女のその後は想像するしかないが、おそらく、家に連れ戻されたのではないだろうか?
そして、より強固な『籠』の中に閉じ込められてしまった、のかもしれない。
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