映画『モンタナの目撃者』は2021年公開。監督はテイラー・シェリダン。出演はアンジェリーナ・ジョリー、フィン・リトル。
映画『モンタナの目撃者』あらすじ
オーウェンはある秘密を握っていた。その秘密が明るみに出れば、全米を揺るがしかねない。
オーウェンは自分が狙われていることを察知し、息子コナーとともに逃走するが、その逃走中に暗殺者によって殺されてしまう。父の死を目撃してしまったコナーは、父から託された秘密を握り、モンタナの森の中へ逃げた。
山林火災初動部隊のハンナは、山火事の消火活動中に自身の判断ミスで子供を助けられなかったことを悔やんでいた。
そして今、ハンナの前に逃走中のコナーが現れる。
ハンナはコナーを連れ暗殺者から逃げようとするが、暗殺者が放った炎が森を焼き、二人に迫る。
映画『モンタナの目撃者』ネタバレ感想
映画『モンタナの目撃者』のネタバレを含みます。
愛する者を守るために
イーサンは保安官、そしてアリソンはその妻。イーサンは保安官としての正義感もあったのだろう、迷うことなく事件に飛び込んだ。
イーサンは、妻のアリソンが暗殺者たちに捕らわれていると思わされていた。実際にはアリソンは逃げ、捕らわれてなどいなかったのだが、イーサンに知る由は無い。
イーサンはアリソンに危害が及ぶことを案じて、暗殺者たちに従った。愛する者を守るために、従う以外何ができただろう。
一方アリソンは、イーサンを救うために追跡を開始する。サバイバル術を教えているだけあって、さすがに手際が良い。
暗殺者たちに追いつき、反撃を開始したアリソンは容赦ない。愛する者を守るため、一歩も引かずに戦いを挑み、弾切れとなった後も冷静に再装填し、勝利した。
イーサンは最終的に命を落としてしまった。
愛する夫を亡くしたアリソンだったが、あくまでも落ち着いているように見えた。おそらく、覚悟はできていたのだろう。
炎に囲まれたあの塔の上で、おなかに宿した新しい命とともに家族三人で寄り添ったあの時間、あの記憶は、アリソンにとって何よりも力をくれるものとなるだろう。
父から託されたもの
コナーは目の前で父を殺された。亡くなった父から託されたメモを持って、コナーは逃げた。父の死を無駄にしないために。
まだ幼いコナーにとって、父の死は、ましてや目の前で父が殺される瞬間を目撃してしまったことは、言葉に表せないくらいつらい経験だったに違いない。
だがコナーは涙をこらえ、走った。信用できる人に父から託されたメモを渡すために。
コナーも守られ逃げるだけではない。山火事の中、暗殺者に立ち向かった。
自分を守ってくれた人たちのため、父のため、コナーはあの数日の間に成長したのだろう。大切な人のため、勇気をもって立ち向かうように。
過去の傷
ハンナは、過去に自分の判断ミスで子供を助けられなかったことを悔やんでいた。
だからこそ、コナーと出会い、今度こそ助けるんだという思いがハンナを強く突き動かしたのだろう。
もしかしたら最初は、コナーを塔まで連れてゆき、そこで無線でヘリコプターなり車なりを呼んで、コナーを渡して終わりにするつもりだったのかもしれない。だが運悪く無線が故障していた。
さらに、歩いて町まで行こうとしても悪天候に阻まれ、塔まで戻ってみれば、今度は暗殺者たちが塔に辿り着いてしまった。
ハンナにとってはもう、コナーのことは他人事ではなく自分事になってしまった。
決して戦闘のスペシャリストなどではないハンナが暗殺者たちに立ち向かったのは、もう見殺しにしたくなかったから。
コナーを守り、助けたことで、ハンナの過去が変わるわけではない。それでも、今度こそ見捨てずに助けたことで、ハンナの苦しみは幾分かでも癒えたのではないだろうか。
決して明るくない未来
暗殺者たちから逃れ、生き延びたコナーだが、その未来は決して明るくはない。
母を癌で亡くし、父も暗殺者により殺され、一人ぼっちとなってしまったコナー。
ラストシーンでハンナがコナーの今後について「それはこれから考えましょう」と語っていた。
この先、コナーは施設に入れられるか、親せきの家に預けられるかするのだろう。
未来のことは分からないが、今回の経験で精神的に強くなったコナーはきっと、困難に立ち向かってゆくことだろう。
これだけの経験をしたのだ。たとえ学校などでいじめにあっても、立ち向かってゆくことだろう。
コナーは本物の暗殺者に立ち向かったのだから。
【本作】
映画『モンタナの目撃者』関連記事
『消耗品』と呼ばれる者たちが独裁者に立ち向かう
ある事件を捜査していた刑事たちは街の、そして人間の闇の部分を知ることになる
仲間を殺された刑事の復讐が始まる