映画『ノンストップ・バディ 俺たちには今日もない』は、2014年公開。監督はペーター・トアヴァルト。
銀行強盗犯が見舞われる悲劇を扱ったコメディ作品です。
映画『ノンストップ・バディ 俺たちには今日もない』あらすじ
銀行で融資担当をしていたティルは、拳銃を片手に銀行強盗を起こした。
時間を遡ること72時間前、ティルはまだ、普段通りの生活を送っていた。
ティルは妻と最近あまり上手くいっていない。その日も、ティルは勤め先の銀行で、電話で妻と口論していた。
その口論の真っ最中、ティルの務める銀行に強盗が入り、ティルは人質になってしまった。
人質となってしまったティルだったが、ある勘違いから自暴自棄になってしまう。
かくして、日頃の不満が爆発して暴れるティルに、強盗誘拐犯の方が振り回される羽目になってしまうのだった。
映画『ノンストップ・バディ 俺たちには今日もない』感想
映画『ノンストップ・バディ 俺たちには今日もない』のネタバレを含みます。
日常の不満
一見、真面目そうなティルだが、妻が不倫をしていると勘違いし始めた辺りから様子がおかしくなってゆく。
人質だったティルは一度は解放され、家に戻るが、そこで決定的な勘違いが。
この勘違いのせいでティルの中に溜まっていた不満が爆発してしまった。
さらにはお酒が入り、もともとお酒が入ると素行が悪くなるタイプのティルは、悪人であるはずのナッポにたしなめられる始末。
ティルが溜めていた不満の原因。それは主に家庭のこと。家族を支えるために好きなロックバンドを辞めて銀行員に。おまけに、妻は大してお金にならないことのために家を空けることが多く、どうやら家事の多くをティルがやっているようだった。
家計を支えるために好きなことを辞めて好きでもない仕事をして、おまけに家事の多くをやらされて。その上、妻が不倫していた(勘違いだったが)となれば、自暴自棄になるのも何ら不思議ではない。
不満が爆発してお酒も入ったティルの暴走っぷりはメチャクチャで、観ていてナッポの方が可哀想に思えるほど。
ティルはもともとお酒が入ると暴走するタイプだったようだが、あそこまで暴走するには相当な不満を抱えていたことだろう。
ティルほどではないにしても、暴走寸前の人、日本にも結構いるだろう。お祭りで暴走して物を破壊したりする人たちも、普段から不満を溜め込んでいるのかもしれない。
今も残る過去の記憶
映画『ノンストップ・バディ 俺たちには今日もない』はドイツ映画だ。
ティルが銀行で後ろから撃たれたシーン。撃ったのは老人だった。
ティルを撃った老人の口から出た言葉は「ナチめ」の一言。世代的に、第二次世界大戦でナチスに苦しめられた人かもしれない。
私は戦争を知らない世代なので、戦争がどれだけ悲惨なものなのかは本や映像、証言などから知識として知っているだけだ。実際に体験された方は、私などが想像するより遥かに苦しい体験をされたことだろう。
若い頃の苦しい体験から、今なお恨みを抱えている方もおられることだろう。
映画『ノンストップ・バディ 俺たちには今日もない』では、普段の生活から不満を溜め込んだティルの姿が描かれていた。
ティルを撃った老人もまた、過去の戦争の体験から、心の中に不満や怒りといった感情を抱え込んでいたのだろう。その感情が、目の前にいるドイツ人強盗犯と、手の届く位置にある拳銃とを見た時に、暴走してしまったのかもしれない。
日常に心の底から満足している人なんてまずいないだろう。誰もが何かしらの不満や怒りを抱えている。その感情は、いつか突然、暴走してしまうかもしれない。
そう考えると、少し怖くなってしまう。
【本作】
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