小説『夜波の鳴く夏』は、著者 堀井拓馬によるオカルト系ホラー作品。エログロ系描写あり。
小説『夜波の鳴く夏』あらすじ
大正時代。と言っても、人間と妖怪が共存する架空の世界。
妖怪『ぬっぺほふ』は財閥令嬢『コバト姫』に飼われていた。
ぬっぺほふはコバト姫に想いを寄せている。
だが、ある日、コバト姫が義理の兄を慕い、あろうことか肉体関係を持っていることを知ってしまう。
コバト姫の義理の兄を殺害しようと決意するぬっぺほふ。
『夜波』と呼ばれる『見た人を不幸にする絵』を使って。
『夜波の鳴く夏』のエログロ描写について
この『夜波の鳴く夏』は、アマゾンでたまたま見つけて、表紙に惹かれて買いました。
てっきり表紙の少女(コバト姫)が主人公なのかと思っていたのですが、読み始めてみたら、主人公は少女の後ろにいる得体の知れない肉の塊の方だったので「え? こっち?」なんて思ったのを覚えています。
さて、この『夜波の鳴く夏』にはエロ描写が含まれています。
コバト姫がぬっぺほふのことを愛玩動物(愛玩妖怪?)としか思っていないせいで、あられもない姿でぬっぺほふに跨がります。そのコバト姫の顕になった肉体がぬっぺほふの視点で描かれていく。
成人向けというほどキツイものではありませんが、「エロは絶対に嫌!」という方は読んでいられなくなるかもしれません。
また、『夜波の鳴く夏』にはグロ描写も含まれています。
ここで詳しくは書きませんが、スプラッタ系の描写が駄目な方は途中で読めなくなってしまうかもしれません。
ただ、そのようなエログロ描写も『夜波の鳴く夏』を魅力的にする大切な要素です。
エロやグロがどうしても駄目、という方にはキツイかもしれませんが、多少は大丈夫という方なら、きっとグイグイ引き込まれることでしょう。
『夜波の鳴く夏』は、最初から順に読んで!
『夜波の鳴く夏』は、絶対に、最初から順に読んでください。
間違っても、先に最後のページを読んでしまわないよう、くれぐれもお気をつけください。
小説『夜波の鳴く夏』感想
小説『夜波の鳴く夏』のネタバレを含みます。
どこか憎めない「ぬっぺほふ」
エログロ描写も多々あるが、この小説『夜波の鳴く夏』は、ぬっぺほふのコバト姫への一途な想いを描いた純愛小説とも言えるだろう。
コバト姫を愛するあまり、コバト姫の義理の兄を殺害しようと奔走する。
すべてはコバト姫への愛のため。
完全に歪んでいるが、ぬっぺほふのコバト姫への想いは真っすぐで歪みがない。
だからといって、ぬっぺほふの行動は許されるものではない。
コバト姫への愛を成就させるために人を殺して良いわけがない。
良いわけがない、のだが、どこか憎めないのがぬっぺほふというキャラクター。
やっていることは最低なのに、なぜか可愛らしいとも思えてしまう。
現実にもいると思う。冷静に見れば最低なのに、なぜか愛されている人。
最低だけど、どこか抜けていて、可愛らしく見える面を持っていて。
ただ、ぬっぺほふのような性格をわざと演じようとするとかえって気持ち悪がられるだろう。
このぬっぺほふのような性格は天賦の才能なのかもしれない。
夜市?
『夜波の鳴く夏』には『無得市』という、市場が登場する。
この無得市。読んでいて「あれ?」と思う方もいるかもしれない。
私も「あれ?」と思った一人だ。
この無得市、人気ホラー小説『夜市』のオマージュだと思う。
もういっそのこと、『夜市』という名前で登場させてしまえばいいのに、と思ったりもした。
『夜市』の他にも『夜波の鳴く夏』には他作品のオマージュが含まれているので、探してみるのも楽しいかもしれない。