映画『X エックス』は、2022年公開、 タイ・ウェスト監督、 ミア・ゴス、ジェナ・オルテガ、マーティン・ヘンダーソン、ブリタニー・スノウ出演によるスプラッタ系ホラー作品。
映画『X エックス』あらすじ
1971年、ポルノ映画の撮影のために、マキシーンたち6人はある農場を訪れた。
その農場には老夫婦のみが住んでいた。少し気難しそうな夫と、少し様子がおかしい妻。
そんな老夫婦たちに隠れて、マキシーンたちはポルノ撮影を始めた。
夜。撮影クルーたちの間で言い争いが起き、カメラマンのRJが帰ろうとする。
RJが一人で車のそばまで来ると、そこには老夫婦の妻の姿が。
妻はRJを性的に誘うのだが、RJはこれを拒否。すると妻の態度が豹変するのだった。
映画『X エックス』ネタバレ感想
映画『X エックス』のネタバレを含みます。
抑圧された世代、抑圧から解放された世代
老夫婦と若者たちとでは、明らかに大きな違いがある。
老夫婦は、規律・決まりを守ることを良しとした世代。自分よりも社会を重視した世代。
若者たちは、規律・決まりからの解放を求め、「もっと自分らしい、縛られない自由な生き方」を重視した世代。
若者たちからしてみれば、老夫婦の世代は堅苦しくて口うるさい存在だっただろう。
一方で、老夫婦からしてみれば、若者たちは、年代的に二度の世界大戦を経験して思うような人生を歩めなかった自分たちとは対象的な、自由を求め、自由に生きようとしている存在。
「自分たちはこんなに苦しんできたのに」という思いが老夫婦たちの中にあったのかもしれない。ましてや、年長者である自分たちを尊重するどころか、貸した小屋の中で勝手にポルノ映画の撮影を始めるような若者たちに、呆れを通り越して怒りすら感じていたのかもしれない。
そして同時に、自由に生きる若者たちを羨ましく思っていたのかもしれない。
欲しかったもの、失ってしまったもの
老夫婦はすでに若さを失ってしまった。
夫は、妻から性行為を求められても、体が保たない、心臓が保たないと言って断ってしまう。
妻は、夫が求めに応じてくれないから若者を誘おうとするが、若者は応じてくれない。若者は、若者同士では性行為をしているのに、年老いた自分は相手にしてくれない。
さらに、若者たちは自分たちが欲しかったけど手に入れられなかった自由を手にしている。
老夫婦は、特に妻は、若さと自由を持つ若者たちに憎しみのような感情を抱いていたのだろう。
「いつかはお前たちも老いぼれる」と若者たちに言いながら、内面では若者たちに嫉妬し、老いた自分に絶望していたのだろう。
いい子など居ない
映画『X エックス』中で何度か使われたセリフ「いい子など居ない」。
劇中のテレビで聴衆を前に語る男性。「娘は悪魔に囚われ、変わってしまい、家を出てしまった」
この男性、そして男性と同じか上の世代からしてみれば、解放を求めて自由に生きようとする若者たちは「悪魔に囚われた」と見えたのだろう。
このテレビ内で語る男性の娘が、本作『X エックス』で最後に生き残った女性マキシーンだった。
かつてはいい子だったマキシーン。だが、マキシーンは変わってしまった。自分らしさを追い求め、ポルノ映画に出演する。父親である男性からしたら、それこそ「娘は悪魔に囚われた」と見えたことだろう。
親や世間が求める「いい子」とは、親の言うことをよく聞き、社会のルールを守り、そのルールの中で社会に貢献する良い市民で有り続けること。
かつて「いい子」だったマキシーンが変わってしまったことで、父親は、そしてマキシーンの過去と現在を知っている者は、「いい子など居ない」と言うのだろう。
実際には、誰だって抑圧されれば解放を望むだろうし、その『解放』により全くの別人のようになってしまう人は珍しくないだろう。つまり、誰だって、何らかのきっかけで『いい子ではなくなる可能性』を秘めているのだ。
【本作の前日譚。殺人鬼パールが犯した最初の殺人事件を描く】
【本作】
映画『X エックス』関連記事
本作『X エックス』に登場した殺人鬼パールが犯した最初の殺人事件を描いた作品
若者たちが夏を過ごすために訪れた家。その隣人は狂気の殺人一家だった。
クリスタルレイクを訪れた者たちが無差別殺人鬼に襲われる。殺人鬼ジェイソンの恐怖を描いた人気ホラー映画のリメイク版