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【映画】オッペンハイマー~あらすじと感想~原爆の父と呼ばれた男の栄光と苦悩

映画『オッペンハイマー』あらすじと感想

映画『オッペンハイマー』は、2023年公開、クリストファー・ノーラン監督、キリアン・マーフィー、エミリー・ブラント、ロバート・ダウニー・Jr出演による歴史ドラマ。

第96回アカデミー賞にて13部門にノミネート、7部門で受賞。

映画『オッペンハイマー』あらすじ

第二次世界大戦中、アメリカにおいて原子爆弾開発を成功させた天才物理学者J・ロバート・オッペンハイマー。

彼はなぜ、その天才的な頭脳で大量破壊兵器を開発してしまったのか。

自らが開発した原爆がもたらしたあまりにも大きな惨劇に、彼は苦しむ。

さらに、人間たちの醜い悪意によって彼の人生は狂わされていく。

映画『オッペンハイマー』ネタバレ感想

映画『オッペンハイマー』のネタバレを含みます。

きっと、誰かが創っていた

オッペンハイマーはユダヤ人だ。第二次世界大戦において、ユダヤ人はナチスドイツによって虐殺されていた。オッペンハイマーが原爆の開発に心血を注いだ大きな理由の一つに「ユダヤ人の同胞たちを救いたい。同胞たちの恨みを晴らしたい」という気持ちがあっても何ら不思議ではない。

また、原爆の開発はアメリカだけが行っていたのではない。ナチスドイツも、日本も行っていた。

たまたま、アメリカが最初に開発したというだけ。もしかしたら、ナチスや日本が先に原爆を開発し、世界を、ヨーロッパを、アメリカを、火の海に変えていたかもしれない。

きっと、原爆の開発に成功したオッペンハイマーは、「これで同胞たちの恨みを晴らせる。戦争を終わらせられる」と考えただろう。だが、開発が済めば、原爆はもうオッペンハイマーの管理下を離れてしまう。

結果、原爆は広島と長崎に落とされ、軍人ではない一般市民が犠牲となった。

オッペンハイマーの苦悩

原爆が完成するまでと、原爆が使用された後とで、オッペンハイマーの様子は明らかに変わっていた。

印象的だったのは、どこかのホール(体育館?)のようなところで、一般聴衆を前にオッペンハイマーが演説するシーン。演説しながら、オッペンハイマーの目には眼前の人々に原爆がさく裂し、人々が焼け爛れていく姿が見える。

ノーラン監督によると、このホールのシーンで顔が焼けただれた女性を演じたのは、ノーラン監督の実の娘さんだったそうだ。核兵器の使用を他人事としてとらえてはいけない。自分の大切な人が犠牲になる可能性もあるのだ、というメッセージが込められているのだろう。

このホールのシーンをはじめとして、映画ではオッペンハイマーの苦悩する姿が描かれる。

オッペンハイマーはまさに、世界を破壊できる手段を人間に与えてしまった。

オッペンハイマーは、核軍縮を訴えるが世界は軍拡へと進んでしまう。

核兵器を持つことによって抑止力になる。そうかもしれないが、核兵器を使うのは人間だ。人間なんて、どんな理由で何をしてしまうかなんてわかったものではない。多くの人が理解できない理由で核兵器を使用してしまう者が今この瞬間に現れても何ら不思議ではない。

人間の悪意

オッペンハイマーは、ロシアのスパイ容疑をかけられてしまう。

裏で糸を引いていたのは、ルイス・ストローズ。

ストローズは、劣等感や猜疑心の塊のような人間。オッペンハイマーの過去の言動をいつまでも根に持ち、また、オッペンハイマーがアインシュタインに自分の悪口を吹き込んでいたと思い込んでいた。

実際には、オッペンハイマーとアインシュタインは、ストローズのことなど一切気にかけてすらいなかったのだが。

ストローズのような人間は珍しくはない。実際、私も現実に同様の人物と出会ったことがある。常に自分が馬鹿にされているのではないかと気にかけ、勝手に妄想を広げて他人を恨み、いつまでも根に持ち、そして何らかの機会が巡ってきたら徹底的に攻撃する。

このような人間には関わらないのが一番だと思うが、厄介なのは、このような人物は勝手にこちらに関わってくることだ。なにしろ、このような人物が見ているのは現実ではなく妄想。下手をしたら、道ですれ違っただけでも「私をないがしろにしている」と思い込んで憎しみを募らせるかもしれない。

オッペンハイマーも厄介な人物と関わってしまったものだと思う。ストローズと関わらなければ、オッペンハイマーはもう少し自由な主張ができたのかもしれない。

なお、ストローズは軍拡の指揮を執ったが、後に、その執拗さと幼稚さから米国議会で一切相手にされなくなり、公職から追放されたそうだ。

本当に恐ろしいもの

オッペンハイマーが開発した原爆、そしてその後に開発された水爆。これらは確かに恐ろしいものだ。世界を火の海に変えることができる、大量破壊兵器だ。だが、兵器は兵器でしかない。誰も使わなければ、ただそこにあるだけのものにすぎない。

本当に恐ろしいものは、人間そのものだと思う。

人は他人を恐れ、他人を恨み、他人を攻撃する。この攻撃の手段として、人間は核兵器を持ってしまった。

オッペンハイマーの罪は、人間に『世界を滅ぼせる手段』を与えてしまったこと。

完成してしまった以上、もう核兵器のない世界には戻れない。

人間は相手を疑うもの。たとえ、世界の国々が一斉に核兵器を放棄したとしても、本当に相手がすべての核兵器を放棄したのか疑わしい。果たして、素直にすべての核兵器を完全に放棄する国などあるのだろうか。

人間は核兵器を手に入れてしまった。もう核兵器のない世界には戻れない。

人間にできることは、核兵器の恐ろしさを知り、核兵器を使わない、使わせないことを徹底するしかないだろう。

【映画『オッペンハイマー』の原作】

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