PR

【映画】凶悪~あらすじと感想~実際の殺人事件を元にしたノンフィクション

映画『凶悪』

映画『凶悪』は、2013年公開、白石和彌監督、山田孝之、ピエール瀧、池脇千鶴、リリー・フランキー出演による事実をもとにしたサスペンス作品。

R15+指定。

映画『凶悪』基本情報とあらすじ

雑誌『明潮24』に一通の手紙が届く。

その手紙は、死刑判決を受けた須藤という男からのものだった。

明潮24の記者である藤井は、須藤と面会する。

藤井は須藤から、まだ誰にも話していない3件の殺人事件があるという話を聞く。

須藤がこの話をしたのは、その事件を記事にして、首謀者である『先生』の罪を白日のもとにさらして欲しいという願いからだった。

藤井は、須藤の証言の裏付けを取るために取材を進めていく。

やがて、明らかになる凶悪な真相。

「人の命をお金に変える」

人を人とも思わない凶悪殺人鬼たちの姿がそこにはあった。

映画『凶悪』感想

映画『凶悪』のネタバレを含みます。

家族からも邪魔にされる老人

この映画『凶悪』は、実際に起きた『上申書事件』と呼ばれる凶悪殺人事件を元に描かれたノンフィクション。

この映画の内容から凶悪さに注目が集まっているが、私がこの凶悪さと同じくらいに注目したのが、『家族からも邪魔にされる老人』。

邪魔にされる理由は、例えば、借金や痴呆症。

『凶悪』の中でも、借金5,000万円を抱え、家族から殺害依頼を出されてしまう老人が登場した。

また、主人公である藤井の母も、痴呆症のために、藤井の妻を苦しめていた。

このような『家族からも邪魔にされる老人』は、きっとこれからも増えていくことだろう。

現実に、現在進行形で、家族から「早く死んで欲しい」と思われている老人は、きっと少なくないはず。

なぜ、こんな社会になってしまったのだろう?

なぜ、人生の晩年を迎える頃になって、大切な家族から邪魔にされてしまうのだろう。

なぜ、人生の晩年を迎えた大切なはずの家族を邪魔にしてしまうのだろう。

きっと、余裕が無いのだろう。金銭的にも、精神的にも、社会構造的にも。

例えば、あなたの両親のことを考えてみてほしい。

今は、あなたの両親は元気かもしれない。

もしかしたら、将来的には介護が必要になるかもしれない。

もしかしたら、両親はあなたの知らない借金を抱えているかもしれない。

もしかしたら、両親が痴呆症になるかもしれない。

借金はなんとかなったとしても、痴呆症の両親を介護しながらの生活は想像を絶する辛さだろう。

「養護施設に預ければいい」そう簡単な話ではない。

そもそも、質の良い養護施設は空きがない。

介護者への賃金はあまりにも低く、なり手がいない。

これから老人の数が増え続けるこの国で、低賃金で重労働な介護職に就こうなどという人がどれだけいるだろうか?

これから先、家族が自宅で介護をするケースが増えていくことだろう。

何か、根本的な対策(老人が、亡くなるその瞬間まで、介護を必要としないで済む何らかの対策)が施されるまでは。

今、この国の状況は「危機的」などという言葉では足りないくらいのところまで来てしまっていると思う。

もしかしたら、今この瞬間にも、老人がお金のために殺されているかもしれない。

「そんな、お金のために家族を殺すなんて、いくらなんでも……」そう思うだろうか?

この『凶悪』という映画、ノンフィクションだ。

決して特別ではない『凶悪さ』

『凶悪』のラストシーン。

先生が藤井を指差すシーン。

非常に印象的なシーンだった。

先生は藤井の中にある「先生を死刑にしたい」という気持ちを見抜き、「お前の中にも凶悪な心があるんだ」と教えようとしたのだろう。

残酷な行いをするのは、なにも限られた一部の人だけではない。

『凶悪』の中でも、夫であり父である老人を殺してくれと依頼した家族が登場した。

藤井の妻も、認知症の義母に手を上げていた。

凶悪な心は決して特殊なものではなく、誰の心にも存在するもの。

何らかのきっかけで表面に現れ、『良い人』を『犯罪者』に変えてしまう。

そのきっかけは、おそらく、外部からの刺激であることが多いのではないだろうか?

誰かから追い詰められ、自分が助かるために相手を殺害する。

追い詰めている方は、相手がまさかそこまで苦しんでいるなんて夢にも思っていないかもしれない。

追い詰めているという自覚すら無いかもしれない。

だが、誰かを攻撃すれば、何らかの形で返ってくるもの。

自分がやり返される覚悟がないなら、他人を攻撃なんてしないことだ。

そもそも、他人を攻撃して何になるのか?

一時の優越感に浸るよりも、幸福な人たちの中で幸せに暮らす方が良いのではないだろうか。

error: Content is protected !!
?