映画『ボーはおそれている』は、2023年全米公開、アリ・アスター監督、ホアキン・フェニックス主演による作品。
映画『ボーはおそれている』あらすじ
メンタルクリニックに通う心配性の中年男性ボー。
彼の日常を不安に満ち溢れ、なにげない生活を送るだけでも一苦労だった。
そんなある日、少し前まで電話で会話していた母が突如怪死してしまう。
ボーは一度は諦めた里帰りを決意し、その道中で様々な奇妙な出来事に見舞われてゆく。
ただの里帰りが壮大な旅へと変貌してしまった。
映画『ボーはおそれている』感想
映画『ボーはおそれている』のネタバレを含みます。
過剰な愛情の果てに
幼い頃に母親から愛してもらえなかった女性。
やがて女性は息子を授かり母となった。
女性は自分が得られなかった愛情を息子に注ぐ。
自分のすべてを捧げるかのような狂気的な愛情を。
息子は母親から鉄壁の愛で守られ、大人になっても『鉄壁』の外側を恐れていた。
親離れ、子離れ
本作は『子離れできない母親』と『親離れしたいのにできない息子』の対立を描いている。
息子は母親の家に向かいながら、過去を振り返り、また、『あったかもしれない人生』を思い描く。
我々観客は、息子の人生経験、不安や恐怖を共有させられる。
そして息子がたどり着いた場所は……。
愛から生まれた強迫観念
結局、息子も母親も、「しなければならない」という強迫観念に囚われていたように思う。
息子は、母親からの鉄壁の愛の外側では不安や恐怖に苛まれる。
自分では決められない。母親がいなければ、恐くて恐くて仕方ない。
けど、その母親にも恐怖を感じる。
母親は、自分が得られなかった愛を惜しみ無く息子に注いであげたい。
息子から愛される母親になるために、もっと愛を注がなければ。
自分が愛を絞り出してまで与えているのに、なぜ息子は私を一番に大切にしてくれないの?
旅路の果てに……
二人の関係がややこしいのは、不安や恐怖といった感情はあるが、お互いに相手を愛していること。
愛しているからこそ愛の深さを探りたくなるし、衝突もする。
とはいえ、監視や支配にまで行き着いてしまったこの母親の愛は、さすがに行き過ぎだと思うが。
そして息子は、あのラストから察するに、母親離れできなかったのだろう。
母親の羊水の中で命を得た息子は、結局は水の中、すなわち母親の愛情にこれからも囚われ続けるのだろう。
【『ボーはおそれている』監督による大ヒット作】
【本作】
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