小説『コンビニ人間』は、著者 村田沙耶香による小説。
小説『コンビニ人間』あらすじ
古倉恵子はコンビニバイト歴18年の36歳。
幼いころから考え方が少し違った彼女は、社会の一員であるために、今日もコンビニ店員として生きる。
ある日、一人の男性が現れたことで、それまで同じだったコンビニという社会が変わってしまう。
彼女はコンビニ店員であり続けたいのだが……。
小説『コンビニ人間』ネタバレ感想
小説『コンビニ人間』のネタバレを含みます。
社会の縮図としてのコンビニ
コンビニは、商品の入れ替えや新商品の追加、期間限定キャンペーンなどはあるが、基本的にいつ行っても同じだ。
店員の入れ替えもある。店長も入れ替わっているかもしれない。
だが、客としてコンビニを見れば、いつ行っても同じように見える。
そのコンビニに、一たび異物が入り込むと、即座に排除される。大騒ぎする客。強盗。一時的な混乱はあるが、すぐに排除され、また元の『同じ』コンビニに戻る。
我々が生きる社会も同じだ。
少しづつ変わっている。だが、大きな異物が入り込むと即座に排除し、また元の社会に戻る。
強盗や殺人を犯すような『異物』は即座に排除されるべきだ。だが、ほんの少し他人と違う、その『違う』の度合いがほんの少し大きいだけ、という人たちは、何とか社会に同調しようと努力する。
『違う』人の生き辛さ
本書『コンビニ人間』では、古倉さんや白羽さんが『少し違う人』だ。
古倉さんは考え方がずれているために、子供の頃に問題を起こした。そして、家族などの大切な人たちを悲しませないために、自分を抑えて周りを観察し、周りと同調することを選んだ。
白羽さんは、どうも『上手くできないことの言い訳として』周りを批判したり「起業する」などと言っているように思えるが、生き辛さを感じていることは間違いないだろう。
これを書いている私自身、少なくとも幼稚園時代にはもう周りから浮いた存在だったので、どちらかと言えば古倉さんや白羽さん側の人間なのだと思う。
社会は『異物』に対して厳しい。即排除しようとする。だがそれも仕方ないことなのだろう。『異物』は理解できない存在だ。『異物』は何をするか分からない。分からないものは恐い。恐いものは排除する。
では、排除された者はどうすればよいのだろう?
一つの答えが、古倉さんのように徹底して自己を抑え、周りに合わせることなのだろう。
そして、元に戻る
本作の最後では、一度はコンビニを辞めた古倉さんが、自分は『コンビニのために存在している』と自覚する。
ここまでくると、白羽さんでなくても「気持ち悪い」と思うだろう。
だが古倉さんにとってみれば、コンビニ店員であることが社会の一員であり続ける唯一の手段なのだろう。
そして、唯一の手段である以上、コンビニ店員であり続けないといけない。
コンビニ店員であり続けないと、社会の一員でいないと、排除されてしまうから。
【読むと世界の見え方が分かるかも?『コンビニ人間』著者による怪作】
【本書】