映画『黒い家』は、1999年公開、貴志祐介原作、森田芳光監督、内野聖陽、大竹しのぶ、西村雅彦出演によるサスペンス系ホラー作品。
映画『黒い家』あらすじ
保険営業マンの若槻のもとに一本の電話がかかってくる。
「自殺でも保険金はおりるのですか?」
若槻は丁寧に回答すると共に、自殺を考えているなら思いとどまるよう親身に説得する。
後日、若槻は保険加入者の菰田に呼び出され、菰田家に行く。
家には誰もいない様子だが、すぐに家主である菰田重徳が帰ってきた。
重徳の話では、家には子供である和也がいるそうであるが、気配がない。
「その部屋にいるはず。戸を開けてくれ」と重徳に言われ、若槻は言われた通りに戸を開けた。
そこには、首をつった和也の姿があった。
その後、菰田夫妻は毎日のように若槻が勤める保険会社を訪ねてきた。
「和也の保険金はまだおりないのか」
結局、警察は和也が自殺したと断定し、菰田夫妻に保険金が支払われた。
だが、菰田夫妻、特に重徳に不信感を抱いた若槻は、重徳の妻である幸子に「重徳氏に注意してください」との手紙を匿名で送ってしまう。
ここから、若槻にとって恐怖の日々が始まった。
映画『黒い家』感想
映画『黒い家』のネタバレを含みます。
心がない
映画『黒い家』のサブタイトルは「この人間には心がない」だ。
この「心」とは、「良心」のこと。
正常な人間なら良心がとがめて絶対にやらないようなことでも平気でやってしまう。
菰田幸子の場合は、配偶者や自分の子供などを保険に加入させ、適当に大怪我を負わせたり自殺させたりすれば、大金を手に入れることができる、と考えたのだろう。
正常な人間なら、このようなことを考えることはあるかもしれないが、実行することはない。
人に怪我をさせたり、殺したりすることに強烈な抵抗を感じるから。
だが、菰田幸子は、平然とやってのけた。
幸子は若槻に対して言った。「親がやっていたのだから、私がやって何が悪い」と。
もしかしたら、幸子は生まれつき良心がなかったのではなく、幼少時代から時間をかけて良心を潰されてしまったのかもしれない。
育てられた環境というのは非常に重要なもので、人格形成に大きな影響を及ぼす。
幸子も、全く異なる幸福な環境で育てられたら、良心のない殺人鬼になどならなかったかもしれない。
リメイク希望
映画『黒い家』では、明らかにおかしなシーンがある。
私が思わず笑ってしまったのは、若槻がトイレにいるときにボーリング玉が投げ込まれるシーン(原作にはないシーンです)。
投げ込んだのは幸子だろう。
幸子さん、とてつもない怪力の持ち主なのですね。若槻がいたトイレは、少なくとも3階以上のはず(若槻が階段で逃げるシーンで、2階と3階の間の踊り場を示す表示がある)。
いったいどうやって、どこから幸子はボーリング玉を投げ込んだのだろう。
また、「乳しゃぶれぇ」も笑ってしまった。
せっかくの緊迫したシーンなのに、必要だったのだろうか、あのカット。
殺し合いをしているシーンで、まさに自分が殺そうとしている相手に自分の乳をしゃぶらせるとか、確かに異常性はあるが、必要なカットだったのだろうか(原作にはこんなカットはない)。
他にも原作にないシーンが付け加えられている。
映画には時間制限もあるので多少の改変は仕方がないこと。
だが、余計なシーンを付け加えるくらいなら、もっと深く掘り下げてほしかった。
映画版も、悪くはないと思うのだが、できれば原作をもっと読み込んで、余計なことをしない人にリメイクしてほしいと切に願う。