マンガ『ミスミソウ』は、著者 押切蓮介によるスプラッタ系ホラー作品。
マンガ『ミスミソウ』あらすじ
冬になると深い雪に閉ざされる田舎の村に転校してきた春香(はるか)。
学校ではよそ者として扱われ、いじめを受けていた。
誰も、先生すらも助けてくれない環境の中、ただ一人、相葉(あいば)という同級生だけは春香の味方をしてくれていた。
あと二ヶ月で卒業。それまで我慢すればいい。そのはずだった。
度を越していくいじめは、ついに行き着くところまで行ってしまう。
いじめはエスカレートしていき、ついには春香の家族にまで被害が及ぶ。
春香の家への放火。
家族を焼き殺された春香は、一人、静かに狂い始める。
深い雪の中。純白の世界を赤く染める復讐劇が幕を開けた。
マンガ『ミスミソウ』感想
マンガ『ミスミソウ』のネタバレを含みます。
いじめという名の犯罪
いじめている側の人間は、いじめられている側の人間の痛みや苦しみなんて、微塵も分かっていないのだろう。
だから、平気で非道いことをする。
相手の痛みや苦しみを分かろうとしないし、もしかしたら、相手が苦しんでいることすら分からないのかもしれない。
多くのいじめっ子は、相手の痛みや苦しみなんて分かることもなく成長し、やがて、自分がいじめっ子だったことも過去の思い出にしてしまう。
一方、いじめられた人は、そう簡単には思い出になんかしないし、相手をいつまでも恨み続ける。
時には復讐することもあるだろう。
本作『ミスミソウ』の場合、いじめは、越えてはいけない一線を越えてしまう。
家を全焼させ、そこに住んでいた家族を焼き殺してしまう。
家を焼いた少女は、復讐の鬼と化した少女に殺されるまで、自分がやってしまったことの大きさが分からなかったのかもしれない。
もしかしたら、ことの大きさを全く理解できないまま死んでいったのかもしれない。
なぜ、こんな事になってしまったのだろう。
あの閉鎖的な空間の中、狂った獣たちをおとなしくさせるだけの力を持った誰かが、たった一人でも事態を収めようとしてくれたら、いじめも、放火も、その先に起こってしまった惨劇も、なかったかもしれない。
だが、誰も事態を収めようとはしなかった。
たった一人でも、力を持った優しい誰かがいてくれたら、救われたかもしれないのに。
せめて、安らかに
物語のおじいさんの「春が来たよ」の一言で幕を下ろす。
「春が来た」というのは、冷たい雪で閉ざされた冬が終わり、新しい季節が始まったという意味だと考えられる。
そうだとすると、春香に対して「地獄は終わったよ」と語りかけていたのかもしれない。
もう、取り返しのつかない事態になってしまったが、せめて、安らかに眠って欲しいという願いが込められているのかもしれない。