小説『あの日の僕らにさよなら』は、著者 平山瑞穂によるラブストーリー。旧タイトル『冥王星パーティー』。
小説『あの日の僕らにさよなら』あらすじ
桜川衛は、ネットサーフィンをしている時に偶然、高校時代に想いを寄せていた少女と同姓同名の女性を見つける。
猥褻なセルフポートレート(自撮り画像)を掲載しているそのサイト。
女性の顔ははっきりと確認できないが、そこに書かれていた日記から、護は確信する。
これは、都築祥子だと。
護は高校時代、目立たない少年だった。
趣味に没頭する地味な少年。
一方、祥子も、特に目立つわけでもない、真面目な少女だった。
二人は祥子の友人を介して知り合い、次第に互いの趣味などについて語り合う仲になっていく。
衛は祥子に強い想いをよせるも、その想いを打ち明けられない。
祥子も少なからず衛に好意を持っていた。
だが、ある日、あることがきっかけで、二人は疎遠になってしまう。
そのまま時は流れ、二人は二十八歳になった。
衛は、高校時代の地味な少年から、成績の良い証券マンになっていた。
衛には恋人もいて、順風満帆とは言えないが、幸せと言える生活を送っていた。
そんな折、都築祥子の名前が書かれた卑猥なサイトを見つけてしまった。
祥子に何があったのか?
再会を果たした衛と祥子が出した答えとは?
小説『あの日の僕らにさよなら』ネタバレ感想
小説『あの日の僕らにさよなら』のネタバレを含みます。
過去の思い出にさようなら
過去の思い出。
生きていれば誰にだって良い思い出も悪い思い出もあるわけで。
そんな思い出の中には、宙ぶらりんになっているものもあると思う。
あのとき、きちんと説明していれば。
あのとき、追いかけていれば。
あのとき、たった一本、メッセージを送っておけば。
もしかしたら、人生が変わっていたかもしれない。
だが、そうしなかったから今があるわけで。
変えられない過去の思い出。
思い出は思い出のまま。それとも、今からでもケジメをつけるべきか?
『あの日の僕らにさよなら』では、衛は祥子を探し出し、互いの過去を語り合う。
宙ぶらりんになっていた過去にケジメをつけて、それぞれの道を歩みだす。
過去は過去として。
二人は再会して語り合うことで、過去を過去のものとして整理し、未来を向くことができたのだろう。
過去に縛られ、後ろを向いたまま生きるのか。
過去にケジメをつけて、前を向いて生きるのか。
どちらが正しいかなんて誰にも分からない。
だが、私としては、衛と祥子が未来の方を向いて生きていくことを願っている。
【本作】
小説『あの日の僕らにさよなら』関連記事
心が傷ついた男は、異界で、異人たちとの交流で癒されていく