
今日は『第9地区』というSF映画のあらすじと感想を書いていくよ

地球に宇宙船が飛来して、『第9地区』と呼ばれる場所に宇宙人たちを隔離するんだけど、地球人と宇宙人の関係はあまりうまくいっていません

映画『第9地区』のレビューを書いている方の中には「『第9地区』は政治風刺映画だ」と発信している人もいるんだ。僕も確かにそう思う。この映画を観る前でも後でもいいから、アパルトヘイトについて知ってほしいな

今回の記事では、『第9地区』の政治風刺的な部分は他のブログ様におまかせして、別視点から感想をまとめます
映画『第9地区』基本情報とあらすじ
まずは、映画『第9地区』の予告編ムービーをご覧下さい。
タイトル | 第9地区 (原題 District 9) |
ジャンル | SF |
監督 | ニール・ブロムカンプ |
キャスト | シャールト・コプリー |
公開年 | 2009年(日本では2010年) |
備考 |
あらすじ
突如、南アフリカ共和国のヨハネスブルグ上空に飛来した巨大宇宙船。
地球人には原因はわからないが、巨大宇宙船はヨハネスブルグ上空で静止したまま。
宇宙船内部に突入した地球人類は、宇宙人と遭遇する。
地球人は、ヨハネスブルグに宇宙人を収容するための『第9地区』を作り、宇宙人を隔離するが、『第9地区』はあっという間にスラムと化してしまう。
宇宙船の飛来から28年後。地球人と宇宙人との間の交流は上手くいっておらず、宇宙人に対する反発や差別が高まっていた。
地球人は新たに、地球人の居住地域から離れた場所に『第10地区』を作り、宇宙人を強制的に移住させる計画を実行し始める。
宇宙人たちから移住の同意を得るために、ヴィカスという男がリーダーに選ばれ、第9地区に入るのだが、ヴィカスは宇宙人が作った謎の液体を顔に浴びてしまった。
ヴィカスの身体は徐々に宇宙人の身体に変化していく。その事実を知った地球人たちは、ある者は恐れ、そしてある者はヴィカスを利用しようとしてヴィカスを追い始める。
追われるヴィカスが助けを求めて飛び込んだのは、『第9地区』だった。
宇宙人化するヴィカス。彼を利用しようとする者たち。ヴィカスは無事に元の人間に戻れるのか?
映画『第9地区』感想

ネタバレを含みます
金のために
映画『第9地区』では、宇宙人化し始めたヴィカスをMNUが力ずくで手に入れようとしました。
MNUは兵器も開発していて、宇宙人が持つ強力な兵器を地球人でも使えるようにしたかったのです。そのために、ヴィカスの身体を調べ、宇宙人の兵器を扱える兵士を作ろうとしたのでしょう。
MNUにとってヴィカスは、もう人間ではありません。巨万の富をもたらしてくれるサンプルです。
MNUにとってヴィカスが人間かどうかなんてどうでもよく、捕まえて研究すれば金をもたらしてくれることが重要なのです。
金に目が眩み、金に心を支配された人間は時に恐ろしいことを平然とやってのけます。
映画『第9地区』でも、人間であるヴィカスを「死亡した」と公表し、生きたまま解体しようとしました。
ここで注意しなければならないのは、金が悪いのではなく、金に支配される人間が悪いのです。
金は金としてそこにあるだけ。その金に心を奪われ、心を支配される人間が悪いのです。
人間の欲は時に底なしとなり、人間を狂気に走らせる。
思い当たる節はありませんか?
力のために
映画『第9地区』では、MNUの他にもヴィカスの身体を欲しがる集団がいました。第9地区で宇宙人を相手に悪どい商売をしているギャングたちです。
ギャングたちは、宇宙人の身体を食べれば宇宙人の力を手に入れることができると考えていました。
そんな考えを持つギャングのボスが目を付けたのがヴィカス。地球人でありながら宇宙人の身体を持つヴィカスの肉を食べればヴィカスのようになれると考えていました。
ギャングのボスがヴィカスを求めたのは、力のため。宇宙人の力を体内に取り込み、宇宙人の力を手に入れるため。
自らが強力な力を手に入れるためなら、他人の腕など躊躇なく切り落とす。自己中心的で、そこに『他人への思いやり』などというものは一切存在していません。
自分さえ良ければいい。自分さえ強くなれればいい。自分の願望さえ叶えば、他人なんてどうなってもいい。
自己中心的な人間の周りには、自己中心的な人間しか残らないのではないでしょうか? 何らかの利害関係のみで繋がり、自分の利益を追求するためなら仲間すらどうなってもいい。
映画『第9地区』に登場したギャングのリーダーも、ヴィカスを捕らえ、いよいよその腕を切り落とそうとしたとき、外でギャングの仲間たちがMNUとの戦闘で命を落としていることなど全く気にもとめていないようでした。
自己中心的な人が辿り着く場所は、人と人との繋がりが希薄な寂しい場所なのではないでしょうか?
あのギャングのボスも、もしも生き残ったとしても、いずれは仲間であるギャングの誰かに殺されていたのではないでしょうか? 利用価値の無くなった老人として。
相互理解の不足が生んだ悲劇
ヨハネスブルグ上空で静止していた宇宙船は、一時的に動かすことができなくなっていただけでした。
20年以上もの間、宇宙人のクリストファーたちがゴミから材料を集め、宇宙船を起動する装置や燃料のようなものを作り続け、ついに宇宙船は再起動したのでした。
あんなゴミの山から作れるようなものなのですから、最初から「この材料があれば、宇宙船を再起動することができる」と伝えることができれば、ものの数年程度で宇宙人は地球から離れていったのではないでしょうか?
言葉の違い、文化の違い。
地球人と宇宙人という、根本から全く異なる生物同士なのですから、何もかもが異なるのは当然のこと。
もっとしっかりお互いを理解し合えていれば、地球人は宇宙人たちから感謝されたのではないでしょうか?
クリストファーが戻ってくるのは3年後。はたして、地球人より明らかに上の文明を持つ宇宙人たちは、地球人たちとどんな『再接触』を果たすのでしょう。
地球人のやったことを考えれば、いわゆる『宇宙戦争』になっても仕方がないと思うのですが?
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